S_News Scenario Cross Review

第五回
雨に濡れた蜃気楼

前置き:佐藤司

前置きといいつつ、前置きすることは特にありません。

ですのでとりあえず、レビュアー紹介です。
いつもの事ですが、一部の方はペンネームとなっています。

KING-SHOW
SRCプレイヤー兼シナリオライター。伏線の解決に執念を燃やす。
えすたま
旧S_News管理人。最近現場復帰を狙ってるとか狙ってないとか。
RIO
有名日記サイト管理人。 誤字の量と漫画購入量には比類なきものがある。
三笠
GSCの管理人。たぶん標準的ライトプレイヤー。
無駄
鬱と鬱の狭間で世界に希望を探すキチガイ。
天羽碧
あそう−みどり。このシナリオが更新される度、作者に感想を送っていた程度には熱心なプレイヤー。

 なお、今回は、三笠氏に許可を得た上で、htmlとしての読みやすさを考慮して、
改行位置や行間、スペースを入れ、原稿を多少整形しました。
 文章そのものには、誤字脱字の修正以外いっさい手を加えておりません。
 ですので、読みにくい等の問題あれば、それは佐藤司の責任です。

 それでは、どうぞ。

【KING-SHOW】

 ――主人公、橘歩美は雷を操る超能力者であり、なぜか雨の日は魔物に襲われしまう。
 
 物語の骨子はここにある。

 主人公は昔から続くその異常な事態を、しかし今や惰性的に受け止めてしまっており、それから解放されることを、半ば諦めてしまっている。

 異常も慣れれば日常へと堕落する。
 主人公は雨の日の魔物に心を煩わされたりはせず、専ら自分の内面世界に没入して、他者との距離を探っている。
 スタンスを表明することはとても大切だ。シナリオ冒頭から、プレイヤーはこの作品がとても感傷的な視点を主軸とした物語であると認識してくれるのだから。
 加えて安定版でこのような画像演出が可能なのかとも驚いた。
 意欲的な演出技法の導入は、すなわちシナリオに対する作者の思い入れの度合いを感じさせてくれる。
 いわゆるノベル系のシナリオには拒否反応を示す向きもおられるだろうが、過去の作品の屍の上を踏まえてきた最近の作品は秀逸なものが多い、筈である。

 画像方面の進化と文章の見せかたは、物語の演出という点で表裏を成し、SRCを更なる深みへと誘ってくれるものであると私は考えている。無論、そればかりに拘泥して基本がおろそかになってはいけないのだが。

 ともあれこの物語は四話からなる短編で、ゆえに作者は主人公以外をはじめから切り捨てている。
 橘歩美のための物語は、横道に逸れることなく、橘歩美の物語として完結を迎える。彼女を核とした人間関係こそさらりと描写されるものの、それはあくまで物語を構成するうえでの必要最低限であり、力点が移行することはない。

 この手法がために、戦闘パートにおける敵方の描写が弱くなってしまうのは、痛し痒しといったところか。最後に控える敵も、能力面はさておきキャラクターとして自分の足で立っておらず、脅威と映らぬままやっつけてしまった感がある。

 個人的な意見としては、阿片を先触れとする一連の要素は、この物語には不要だったのではないかと思う。
 そこの部分だけ、「雨に濡れた蜃気楼」という物語のなかで、微妙な遊離を起こしてはいないだろうか。一話、二話と期待して坂道を登ってきたのに、登りきったら知らない場所に出てしまったような、そんな落胆をおぼえた。

 等と書いてしまうのも、この作品が一定の水準を満たしているからだ。


 内省的な少女はとても萌えるし、能力者としても面白いキャラであるのは間違いない。
 できれば今回だけに留まらず、次回作以降でゲストとしての出演があればいいなあと思ったりもします。惜しむらくは、ユニットアイコンの充実に努めてほしかった。


 尚、一つ誤字を見つけました。「第4話、事故の確立→事故の確率」

【えすたま】

 なにが言いたいのか良くわかりませんでした。
 小難しい哲学めいたものは、良いものか悪いものか評価しづらいのでレビューするには困ります。
 というわけで、ストーリーに関することには触れないでおきたいと思います。

 気力をENに変換できるシステムやクリアポイントなど、工夫が見られますが、ステージ数が少なく敵ユニットも少ないのであまり意味がないものになってしまっています。必要性が感じられません。

 敵が大量に出て来るのであれば、ガンガンEN消費してガンガン気力使って回復して…という見た目に派手な戦闘ができると思うのですがそういう訳でもありませんし、クリアポイントも使う機会がないのではないでしょうか? 使っても反映されるのが1、2話ですし。

 クリアポイントゲットするにはそれなりにヤリコミが必要ですので、ある程度ボリュームのあるシナリオでないと見返りが少ないと思います。

 恐らくライターはゲーム性はあまり重要視されておらず、ストーリーをメインにと考えられてるかと思われます。
 いっそのこと、スッパリと特殊なシステムは切ってしまっても良いのでは無いでしょうか。

 ではでは。

【RIO】

 詩的なタイトルやね。
 なんかツッコミたくもあるけど。
 雨に濡れた蜃気楼って蜃気楼の発生メカニズムを考えればー…どうでもいいから割愛。
 自分が間違ってる可能性も否定できないし恥かいてもなぁ。今更だけど。

 というわけでプレイ開始。
 相変わらず前情報一切無し。

 っとオリジナルシステムの「気力をENに変更できる」ってのがあるのか。
 敵の数がわかんないけど確かに150になっちゃえばそれ以上上がらないんで、気力上昇を無駄にしないで上手い事をENに変換すれば継戦能力が上がったり。

 気力とENのギリギリの攻めぎあいができるという可能性もある。
 ツメスパロボみたいな感じのシナリオにもシステムとして新たに対応できて面白いかも。

 シナリオ中の顔文字きらーい。(爆)とかも嫌いだけど。
 土下座のマーク別に出さなくてもいいじゃん。格好悪い。

 後お願いのフェードアウト遅過ぎのような。まぁどうでもいいか。

 えーとOPっていうのはないのか。
 タイトル画像が出ていきなりインターミッション。
 SRCシナリオには簡潔さを求めている俺としては喜ばしい事なのかしら。


 多分1話。

 サウンドノベルですか?
 いかにもガキんちょが考えていそうなモノローグを数回もクリックして進めるのがどーも。
 3回くらいでええんとちゃう?

 17才の普通ッぽい女の子のちょいとばかり憂鬱で不幸な朝の風景。

 なんかこうあれだ。オサレ系って感じがするな。
 最近やったBLEACH番外編みたいな感じ。

 …えーと、俺確かSRCシナリオをDLしたんだよな。
 なんか普通のアドベンチャーゲームの導入を見ている感じで、ここからユニットがどうたらとか繋がりそうもないんだけど。
 放課後歩美の前に男の子が現れたりとか。

 恋を迷惑だと思う女の子か。

 ピアノのBGMが似合いそうな場面が過ぎてやっとマップが出てきたよ。
 でも戦闘って雰囲気じゃねー。

 お、なんかお化けが出てきたよ。
 なんかいきなりお化け退治しちゃってそれが当たり前のような事言ってるよ。

 まぁ戦いが始まって。
 あれ? MIDIならないな。
 手元のMIDIはなるんだけどな。
 環境が悪いのか…仕方ないからReadmeを見てもなんも書いてない。
 あれー? うち音源SC-88ProだからMIDIだったらなると思うんだけどなぁ。

 ゲームポイントとか言うのもあるな。無視無視。知らんわ。

 なんか単調な気もするけど、ENが尽きたらピンチだし、なんか良い感じだ。

 うん、1話としてはいいんじゃないかな。
 あんまりモノローグ好きじゃないし、主人公暗いから、見ていて気分が良くなるって事はないけど、これは好みだな。
 俺はあんま好みでは無いかな。

 ちょっと他のシナリオで音鳴るか試すために中断。
 鳴らないな。どうも設定がおかしいらしいので修正のため更に中断。
 あれー? 鳴るやつと鳴らないやつがあるなぁ。
 シナリオローカルに置いてあるMIDIが軒並み鳴らない。
 なんかルートフォルダにおいてるMIDIフォルダを優先しているなぁ。
 もしかしてバグ?(バグ究明のために1時間ほどぶっつりプレイが途切れる)

 解決したので続き。

 2話。
 やっぱりBGMはちゃんとなる方がいいね。

 うわっ。例のモノローグが読みにくいなぁ。
 もうちょっと白っぽい色にせぇへん? 俺には読むなって言ってるように見えるな。
 まぁ女子高生風のポエムにはあんま興味がわかないので別にいいけど。

 ちなみになんかの暗喩だろうけど、さっぱりわからねぇ。
 こういう回りくどいのあんまり好きじゃないし。
 雰囲気は出てるから好きな人もいるんだろうけどね。

 なんか画面構成とか作りかたが、映画とかの作りかたじゃないかなぁとか思った。
 つまりこれをSRCでやる意味ってあんの?

 歩美ちゃんの事は良く分かったけど、さっきからちょろちょろ出てくる変な女とかがさっぱりわかんないね。
 まぁそういうものなんだろう。

 まぁいいや。戦闘開始。
 ってーも戦術は1話と変わらず射程外から殴って、攻撃してきたらひらめきが残ってるうちは反撃。
 なかったら回避で距離を取りながら3P武器で削り殺す。

 もうちょっと別の戦い方ないのかなぁ。次もこれだと飽きちゃうよ。

 3話。

 セピアカラーに赤い文字かぶせるなー。プロローグなげーなー。

 マップ脱出か。
 やっとゲームらしくなってきたかな。
 で、どっちに逃げればいいのん? 左側逃げるけど。

 っとなるほど教室か。
 仲間も増えたし、消火器も使えるし戦略に幅が…。あんまふえんな。

 まぁなんとかクリア。結構キツキツやね。

 近衛くん良い子やねぇ。


 4話ー。

 あれ? 作戦目的無しか。まぁいいや。皆殺しー。

 できねー。ムリムリ。

 シナリオ進行して最初に出てきた1年坊主の幽霊を叩き殺す事に。いえー。

 最後が1対1って言うのもなんだかなぁとは思うけど、シナリオ展開上は仕方ないか。

 というわけでゲームクリア。

 あれ? もしかしてレビューで始めてじゃないか? 最後までプレイしたのって。

 書くべき事はもう書いたけど一応総括。

 霊の存在を関知でき、それを重複する普通ではない能力を持った少女。
 ただ普通にいきる事だけが目的だった彼女は、その力があるが故に悩み、その力が悪い事の元凶の様に思っていた。

 そんな彼女が自分の力はなんなのか。力を振るう事の意義を見出していく、短編シナリオでした。

 このテーマに絞って1人称で物語が展開されているので、かなり感情移入度は高いです。
 個人的にこういう語り口好きじゃないけど、それでも、読ませるものはありました。

 読んだって事に注目して欲しいんだけど、正直これSRCのシナリオである意味が薄い。
 戦闘は、はっきり言って物語のおまけにしか過ぎないし。

 それでもゲーム性を出そうと、3話みたいに倒れた親友を引きずる変化球をいれてアクセントにしていたけど、それ以外はSLGである事の最低限度でしかない。
 ゲームポイントとかにしてもそう。はっきり言って無理矢理だと思う。

 はっきり言ってゲームでするのならば、ビジュアルノベルで作るべき作品だと思うよ。これは。
 分岐が無いから単なる紙芝居になっちゃうんだろうけど。

 良作であるのは間違い無いと思う。
 思うけどSRCじゃなくてもっと他の例えばアニメとか、そう言った作品の方がもっと面白くなるだろう作品だなぁと俺は思います。

 そんな感じで。

 あぁとそうそう個人的に感心している点がもう1つばかり。

 オリジナルシナリオって言うものは、自分が0から造りたした言わば自分の分身みたいなものだから、自分はこういうことも考えている、こういう設定もある。どうだすごいだろう? と言わんばかりの設定描写過多になりがち。

 これは仕方ない。生まれたばかりの息子のビデオを他人に見せて可愛いだろうと言うメンタリティとなんら変わらないし、そういうものがないほうが不自然だと思う。

 でも、受け取る側にとってははっきり言ってどうでも良いことの方が多いのも当然のこと。
 受け手と送り手の温度差があまりにもありすぎて引いちゃうってやつね。

 その思い入れの過多をこのシナリオからあまり感じなかった。
 ここを評価したい。

 おそらくDLした時に同じ世界観で云々というシナリオがあり、他で語るからという部分があったであろうから出来たことではあるんだけど、このシナリオは本当に必要最低限度の知識しかこちらに提供してない。

 結局、彼はどういう経緯で知って、どういう組織が関わっているかとか一切語ってないもの。
 あくまでも歩美ちゃんの身の回りだけに話を絞り、彼女の成長を描くということに徹している。

 簡単なようなことだと思うけど中々できることじゃないと思う。
 そのために無駄な登場人物は極力省き、人物描写も必要最低限どの役割が分かる程度にしか説明されていない。
 親友の子が親友だというのは分かったけど、喋っている言葉の背景は全く分からない。
 でも、実際分かる必要があるのかといえば、主題が主人公の成長なんだから否。

 戦闘にしても操作できるキャラクターがほぼ主人公のみなので、動きに迷うことはほとんどない。
 まぁこれは戦闘が添え物だと感じた大きな要因にもなるんだけど。

 オリジナルの短編創作作品の構成としては出来が良い部類に入ると思う。
 起承転結がこれほどはっきりした作品って安定感があって安心するし。

 キャラを絞り、書きたいことをきちっとまとめそれ以外のものは出来るだけ排除する。
 人に見せる創作作品の基本をきちっとまとめたことに対する評価は高いのです。

 やっぱりSRCシナリオである必要性は薄いけどね。
 SRCであることのメリットは人間の動きを表現する。
 危機を脱出する過程がアニメよりも手間をかからずに表現できるって事くらいかな。
 後、話者が誰か誰でも視認出来る事か。

 でも基本的にSLG作成ツールなわけだし、一人称による心理描写ってのは、表情とかも重要になるわけだし。SRCではその辺限度がどうしても出る。

 映像作品で見たら映えるだろうなぁ。

【三笠】

 私は未だにSRCをSRWツクールと見る傾向の強い人間なのですが、このシナリオは様々な点においてSRWライクなシナリオの対極を行っていると言えます。
 その徹底ぶりには若干のカルチャーショックを覚えました。


 まず第一に挙げられるのは、プロローグとエピローグへのウェイトの偏り。
 SRCのスタイルとすればメインでは無いはずのこの部分で、このシナリオは実に濃密な描写を行うことで世界観や人物の姿形をプレイヤーに伝えてくれます。
 SRWタイプのシナリオにおいて元となる版権作品が存在するが故におざなりになりがちなこの部分ですが、サウンドノベルとして活用できるSRCの拡張性をフルに活かしたものと言えるでしょう。


 人物の描写においてもこのシナリオの特異性は引き立っています。

 えてして登場人物が多くなりがちなSRWシナリオでは、個々人に落とし込んだ心情描写が難しく、どうしても俯瞰的な人物描写になってしまいがちです。
 しかしこのシナリオでは、最低限必要な役割を持たせた人物のみを登場させることにより、主人公の心情に焦点を絞った描写を行うことに成功しています。

 結果、主人公の視点で見、主人公の言葉で喋り、主人公の心で考えることが違和感なく行えるために、このシナリオでは非常に巧みに主人公への感情移入が行えるように組み立てられています。

 主人公以外の人物は無用な心情描写を行っていない点もこれを助けています。

 ただ、あまりに主人公の内面描写に絞りすぎたために、ラストで主人公が他人を傷つけるという決断を下すに至った外的要因に対する描写が不足している感もあります。
 主人公がその外的要因をもうちょっと考察するなりといった形で関連付けをより強固に行えれば、より主人公の動機付けに説得力を持たせることができるでしょう。


 さて、このシナリオではプロローグやエピローグの描写が秀でている反面、SRPGゲームの肝とも言える戦闘部分においては少なからず物足りなさを感じざるをえません。
 SRPGをプレイするユーザーには常に2つの大きな欲求が存在します。まず1つは与えられた状況と戦力の中で自らの戦術を練って戦闘を行うこと。そしてもう1つが、敵を掃討することで爽快感を感じることです。

 残念ながらこのシナリオでは、SRPGの駒としての味方が少なく、また個々のユニットが取れる戦闘手段も限定され、かつバリエーションが少ないため、自らの戦術を練ろうにもプレイヤーが取れる手段の幅が狭すぎるのです。
 また、味方ユニットの武器もいまいち決定力に欠けるものが多いので、戦闘での爽快感もまた感じにくいです。

 気力→EN変換システムや三話でのトリッキーな勝利条件など、作者の試行錯誤の跡は見ることができるのですが、根本的なプレイヤーの欲求を満たせない以上、小手先のスパイスでしかないと言わざるを得ません。
 こうなってしまうとSRPGの肝であるはずの戦闘パートがただの添え物となるばかりか、プレイヤーにストレスを与える作業になってしまいます。


 お話だけならばサウンドノベルツールでも充分に作れます。
 しかし、SRCがSRPGツクールである以上、プロローグやエピローグでの練られた描写と同等のウェイトで、戦闘パートの練りこみが必要となってくるのです。
 ただのSLGでもなく、またサウンドノベルゲームでもない。その両者のウェイトを上手いことバランスを取ってシナリオに反映させることこそ、SRPGシナリオを作る難しさでも有り、醍醐味でもあるのです。



 なお、バグというかミスというか。一部のユニットアイコンの背景色がR255,B255,G255になっていない為、透過処理で陣営色が表示されていないものがありました。手前味噌ですが詳しくはこちらを参照してください。

http://www.gsc.ne.jp/guide_graphic.html

【無駄】

 最初に誤字報告な。
 4話目、466行目
『化物に教われる世界だって、普通は誰も信じていないのに?』

 さて、少女が電撃使える理由なんか実は物語性から見たら不要なわけです。
 気になる人は気にしてもいいし、そうした人に回答した方がいいのではあります。

 が、どう説明しても少女が発電出来る科学的に正しい理由なんざありませんわね。
 仮にあったとして、大気中の摩擦が云々でエレクトリックサンダーとか、
 ナチスドイツの科学力は世界一イィィィ!とか、そのへんのレベルでしょう。きっと。

 魔物を倒すのは、というか、正確に言うなら「雨の日は魔物に襲われる。」そして今も彼女は生きている。のは、彼女の日常として存在しています。
 最初にそう力技でいわれた以上、理由に付いては気にするなと言われた気がします。
 だからこそころっと忘れていましたが。

 最後まで忘れてた謎で、その最後の最後で、実はその謎、超越存在の為せる技でしたー。ってのは微妙に卑怯臭い。
 つーか、楽してんなよー、おーい。と言いたくなる回答であります。

 なんでかっていうと、世界を形成するキャラクター達が「日常性」をけっこう意識して作られてるからでありましょう。
 どのキャラも常識的に言動を吐き出してるから世界もすっかり日常色に包まれているわけで、そこで一番、「等身大」であるべき「主人公」までも現に日常どこにでもいそうな、鬱々としたヒキコモリ候補生です。
 そこにいきなり神だの悪魔だの天使だのってのは、最後のどんでん返しとして用意したつもりなのかも知れませんが。
 見てた側としてはΣ(゜д゜lll)ガーンです。なんだよそりゃってレベルです。

 そりゃあそうですとも、このヒロインに自分を重ねて、日常の鬱々とした現象を前向きに捉える方法を検索していた自分からしてみれば。
『実はワタシはスペシャル存在の天使でしたーあははー。だから今から前向きに生きて行くのー。』
 では、羽なんか持ち合わせていない自分はどうしたもんだか、と肩を落としてじめじめとした押入れで寝るしかないのですが。

 やっぱり、ラストで彼女は日常に回帰しています。している以上は、そのままどっかいっちゃうんならまあいいですけど日常に帰ってきた以上は、天使がどうこうとかじゃない人間の方の芸で抱えていた問題を解決して欲しいよなー。と願うわけであります。
 超越存在「天使」としてではなく、人間「橘歩美」が解決して欲しかったです。
 ラストの方が爽やかに人間としての生き方を満喫しているように見える彼女ですが、まあ、飯島拓真の一件は人間として解決したようですので、

―――――――――――― 引用 ――――――――――――
Talk システム
子供の頃、:いくら願っても聞き届けてはくれなかった神様へ
これからも、私なんか見ないで構わないけど、:私ではなく彼のためにこの望みだけは聞いて下さい
彼を助けるために……
End
Wait 16
Redraw
Show
Talk システム
私に、:人を傷つける勇気をください
End
―――――――――――― 引用終了 ――――――――――――

 それはそれで良いことです。

 それで良いのかもしれません。
 だからすごく気になるんですけど、今回は今回でいいとして最後で彼女は力を失ったのか捨てたのか、そのままのほほんと日常に戻ったのかどうかです。
 もし失っていないとするならば、彼女はこれからの人生でも何かコトがあると自分で忌み嫌っていたエレクトリックサンダーに頼ったり、そのせいで後悔するわけで、それって成長ないよなあ。と思いました。

 その力があるせいで他人との接触を避けていたなら、みんなの事が大好きだと思えるようになった今、力の有無は気になる所でありましょう。
 力を持ったまま皆と仲良くなったのか、力をなくして、なくても上手くやっていく為皆と仲良くなったのか。
 後者ちょっと印象悪い言い方ですが、そのあたりが気になって仕方ないです。

 この一件が解決しても、「雨の日は魔物に襲われる」のかなー、とか。

---その天使は、何のために地上に使わされたのでしょう。
 愛を説き、人間賛歌を唱えるためでしょうか、神の敵を打ち滅ぼすためでしょうか。

 システム的には、新システム導入したはいいけれど、そのそれぞれに特に意味が無いため、ふーん。って感じです。
 苦労して取った割りにはボーナスの有用性があまり感じられず、戦闘バランス自体はけっこう緩いからよけいに、何取ろうが変わりばえしなくなるわけです。
 この辺なんかは最近のSRWっぽいですね。

 もともと緩いゲームはどうやっても無駄。なんて恐ろしい台詞は無しにしましょう。

【天羽碧】

 長短わかりやすすぎるシナリオなので、他の方と似たようなレビューになるだろうけれども、一応書くこととする。なお、ダウンロードしたファイルは完結直後のものである。



 正直、第三話あたりから、設定を把握できなくなった。登場人物の感情はわかりやすく、これまでの積み重ねもあり、なんとなく感情移入できるので最後まで読めてしまうものの、なんのために誰とどこで戦っているのかがわかりづらい。
 モノローグや回想が入り組んでおり、話を理解するためにイベントファイルをたびたび覗かねばならなかった。読み返す機能がないSRCにおいては、いささか描写不足だろう。

 ライトノベルなどでありがちな世界観を、歩美という少女の視点から捉えることで、別の見方を示しているあたりは新鮮だった。物語とは、奇抜な設定ではなく、いかにそれを切り取るかが重要なのだ。
 しかしながら、四話の天使悪魔については、やはり成立していない。設定が唐突すぎるということもさることながら、天使悪魔というファクターが、あまりに型どおりすぎて俗っぽく見えるのが不成立の原因だろう。作者自身に無理な素材を調理しているという自覚があり、取り繕おうとして取り繕えずにいるのが透けて見えるあたりもつらいところだ。
 また、歩美のストーリー的にも、天使や悪魔だの宿命だのが絡んでくることで、ストーリーの焦点が大きくそれてしまっている。よくもまあ、たった一話で話を台無しにできたものだと逆に感心してしまった。
 天使悪魔の設定は、筆者未プレイの「宝島」とのリンクのために入れられたらしく、要は作者の自己満足のために、話の完成度が犠牲になったということなのだろう。作者の制作動機が、物語制作ではなく自己満足であるならば、それでいいのだろう。自己満足につき合わされる方はたまったものではないが。

 細かいところを突っつくと、「無名祭祀書」という特殊能力があるが、これはクトゥルフ神話作品のオリジナルアイテムの名称であり、二次創作の匂いを抜くならば、オリジナル作品には使うべきではないと私は考えている。



 戦闘について。基本的に、SRCで味方ひとりの戦闘をおもしろく作るのは困難である。操れるキャラクタが少ないということは、プレイヤーに用意されている選択肢が少ないことを意味する。ゲームのおもしろさを考えるならば、選択肢は多ければ多いほどいい。
(一応言っておくが、選択肢とは、いわゆるルート分岐という意味ではない。この場合では、戦闘における自由度と換言してもらえばわかりやすいか)
 それをごまかすために、このシナリオでは特殊なシステムを導入しているが、あきらかに付け焼き刃である。プレイヤーがシステムに慣れてくるはずの3、4話において、戦闘でシステムを活用できないことがそれを如実に表している。また、システム自体も作り込みが足りていない。
 しかしながら、同作者の次回作「真紅の微笑」においては、別のシステムを導入することで、味方ひとりの戦闘を実におもしろく作り出しており、味方少数での戦闘を作る過渡期と見るべきなのだろう。個人的には、このシナリオでこそ「真紅の微笑」のようなシステムを導入してほしかった。

 選択肢が少なければ、自然と戦闘は簡単になりすぎるか、難しくなりすぎる。解を見つけられるか否かの二択になるからだ。
 このシナリオは、どちらかというと難しい部類に属しており、また、戦闘自体がおもしろいわけではないため、ストーリーのテンポが阻害されている。



 というか、個人的に思い入れがありすぎるシナリオなので、うまくまとまらない。あとは総括にまかせた。

レビュー総括:佐藤司

 このシナリオをレビューする、と決めたのは、色々な人の意見を総合し、かつ私自身もプレイして、これならいける、と考えた結果だった。
 けれどその後、同じ作者の「宝島」をプレイして、しまったなぁ、と後悔したのだ。
 確かに「雨に濡れた蜃気楼」は、明確な欠点こそあれど面白かった。だが、「宝島」の物語は、荒削りながら、これより遥かに力強く、生き生きとしていたのだ。
 せっかく企画するなら、作者のベストの物語を選べばよかったなあ、という後悔である。

 とはいえ、この「雨に濡れた蜃気楼」は、間違いなくSRCの進歩の先端にあるいくつかのシナリオのひとつだ。
 細かい部分では、「宝島」よりこちらの方が優れていることもたくさんある。

 RIO氏や三笠氏がいうように、かつてSRCはスーパーロボット大戦型シナリオ作成ツールだった。
 だが、SRCは、本体の進歩と共にシナリオも変化し、高度に発展していった。
 その結果のひとつがこのシナリオであるが、進歩はまだおしまいではない。


「雨の日には怪物に襲われる。これが私だけの日常だ」

 KING-SHOW氏が詳しく書いているが、つまりこの一文だけで、この物語は勝ったも同然である。
 後は素直に書けば、それだけでこのシナリオは良作になっただろう。
 ただ、作者は、素直に書かなかった。
 それはそれで、意味があることだ。ただ、チャレンジの結果については、作者は責任を持たなければいけない。

 結果の分析は、同じくKING-SHOW氏や無駄氏、そして天羽碧氏がしている。
 否定的な意見ばかりだが、だからチャレンジをするな、というわけではない。
 そもそも、今このようなシナリオがあることこそが、絶え間ないチャレンジの結果だった。
 だったら、次のステップに進む為には、シナリオを書く人々が常にチャレンジャーでなければならないだろう。
 反省は次に生かせばいい。それは、このシナリオをプレイした人々も同じだ。
 だからこのレビューという制度に意味がある。

 戦闘部分についても、同じことがいえる。
 このシナリオに限っていえば、えすたま氏もいうように、失敗だった。
 ほぼ全員が指摘しているが、シナリオの内容とシステムが合っていないのだ。
 だが、同じ作者の新作、「真紅の微笑」においては、もっと斬新で複雑な戦闘システムが取り入れられている。
 これなど、このシナリオにおける挑戦がなければ、生まれなかったかもしれないシステムだろう。


 SRCもシナリオも、日々進歩していく。
 他人のシナリオからそれを吸収し、自分のシナリオにフィードバックさせていくのがシナリオ屋の仕事だ。
 プレイヤーは、進歩を肌で感じながら、楽しみ、なるべく活発に作者に意見をいうべきだ。
 そうすることで、SRC全体に活気が生まれる。

 進歩をやめた文明は、やがて退廃し、滅びて行く。
 SRC本体という器の完成度に耐えるだけの物語とシステムを生み出さなければいけないのは、我々ユーザーなのだ。

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